(エルメスの立体商標権に関する記事ですが、弁護士を廃業して約5年ですので、何か間違ったことを言っているかもしれません、ゴメンナサイ)
通常、商品のデザインを守るのは、意匠権です
しかし、エルメスが意匠権でコピー商品(?)メーカーに対して差し止めや損害賠償を求めたことはないようです
出願の有無はわかりませんが、意匠権では最長で25年間でエクスパイアされてしまう(そのデザインが言わば世俗化するから)ので、もし意匠権を理由に差し止めや損害賠償を求めた場合、期間経過後にはむしろコピーし放題というお墨付きを与えかねない、という経営判断と思われます(私の独断と偏見です)
判例を調べた限り、エルメスは2011年に出願した立体商標権を法的根拠にしています
経済産業省 特許庁によれば
「商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です」
「私たちは、商品を購入したりサービスを利用したりするとき、企業のマークや商品・サービスのネーミングである「商標」を一つの目印として選んでいます。そして、事業者が営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標に「信頼がおける」「安心して買える」といったブランドイメージがついていきます」
「商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です」
こちらは、東京地裁民事47部 令和 3 年(ワ)第 22287号損害賠償請求事件 令和 5 年 3 月 9 日判決別紙の画像です
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/965/091965_hanrei.pdf
つづいて被告の商品です
結論はエルメス勝利
564万円余りの損害賠償(+金利、訴訟費用)が認められました
エルメス側では、その10倍以上の弁護士費用や鑑定費用などが掛かったことでしょう(判決で認められる訴訟費用は実損ではなく、裁判所が作った基準によるもので、100年前の物価水準かというような金額になっている)
私見ですが、被告商品はコロコロしているというかズングリむっくり、まるでエルメスらしさがない・・・
これで似てるというならば、エルメスのデザイナーや職人、何よりバーキンやケリーのオーナーに対する冒とくでは・・・
南京錠も、エルメスの登録商標と類似し、混同の恐れがあるとして、特許庁の無効審決が維持されました
知財高裁令和6年2月19日判決 令和5年(行ケ)第10113号 審決取消訴訟
エルメスのパッケージ色商標(橙色と茶色の色彩のみ)は、登録拒絶です
知財高裁 令和6年3月11日判決 令和5年(行ケ)第10095号 審決(拒絶)取消訴訟
・本願商標の使用による自他商品役務識別力の獲得を認めることはできない
・指定商品との関係で商標法3条1項3号該当性を認めた上で同条2項の適用を否定
・指定役務との関係で同条1項6号該当性を認めた審決の判断に誤りはないとした事例
この訴訟で、エルメスは証拠として消費者アンケートを提出したものの、裁判所は一般消費者からかけ離れているとして、証明力を認めませんでした
・対象者がいずれも30歳~59歳に限定されている
・「世帯年収1000万円以上」又は「バッグ、アクセサリー・時計、コスメ・香水のいずれかに興味があり、これらを半年以内に購入した者」に限定
・各対象者の中心は「エルメス」のような高級ファッションブランド商品の購入者やこれに関心を有すると考えられる者であって、広く一般消費者を対象としたものとはいえない
・・・
これは私見ですが
「エルメスの刻印がなく、デザインもよくよく見ると違う」
といった程度の安物だったら、あんまり厳しく取り締まらないほうがいいと思うんです
というのも、エルメスの抱き合わせ販売についていけない人たちが中古品を買っており、中古市場ではエルメスの刻印まで盗用している悪意のある偽物が混ざっていて、よほどエルメスにも消費者にも社会にも害があるからです
「ポイけど違う」新品が広まれば、偽物のリスクを冒して中古品を買う人は減ると思うのです
\(^o^)/オワタ